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このページには、2014年3月1日開催、最先端研究開発支援プログラムFIRSTシンポジウム「科学技術が拓く2030年」へのシナリオ、に使用したポスター内容を掲載しています。

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集積化MEMS技術による機能融合・低消費電力エレクトロニクス

Integrated MEMS Technology for Multi-functional Low Power Electronics

本研究の学術的特色

1.集積化MEMS分野の背景(本研究の目的は技術の標準化)

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集積化MEMSとは、半導体加工技術により微小な機械構造・センサ・回路を集積化する高付加価値エレクトロニクス技術のことです。この技術は次世代の革新的製造技術・省エネデバイス技術として期待されていますが、従来は応用ごとの開発的要素が強く、設計・製造技術の標準化や理工学としての体系化が立ち遅れていました。そこで本研究では、集積化MEMSの設計・製造手法を標準化して、材料から応用までを見通しよく設計・製作する技術体系の構築に取り組みました。

参考文献: 年吉 洋、「集積化MEMSのための解析・設計・製作技術プラットフォーム」 第23回マイクロマシン/MEMS展同時開催プログラム「半導体企業のためのMEMS講座」(専門講演)、2012年7月11日、東京ビッグサイト

2.集積化MEMSの統合設計法(回路シミュレータ上で等価回路解析)

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MEMS機械構造を有限要素法で解析しても、ノード点数が多すぎるために電気回路との統合設計ができません。 そこで本研究では、電気回路シミュレータ上でMEMS機械構造の等価回路(運動方程式)を解く手法を構築し、フリーウェアとして一般公開しました。 また、世界標準回路設計CADのCadenceにも移植しました。

参考文献: T. Konishi, K. Machida, S. Maruyama, M. Mita, K. Masu, and H. Toshiyoshi, IEEE/ASME J. Microelectromech. Syst., vol. 22, no. 3, Jun. 2013, pp. 755-767.

3.集積化MEMSの製作法(ポストCMOSーMEMSプロセス)

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幅広く使える集積化MEMSプロセスとして、CMOS集積回路を製作した後のウエハに金属薄膜(スパッタ等)や金属メッキ膜を用いてMEMS構造を製作する手法を開発しました。 その応用例として、集積回路中の不要な電源を遮断する静電駆動型パワーゲートスイッチや、高周波無線通信用の可変容量などを設計・製作しました。 また、MEMS素子を用いてNOT、NAND、NOR、XOR、XNOR等の論理演算が可能であることを理論的・実験的に検証しました。

参考文献: M. Mita, M. Ataka, and H. Toshiyoshi, “Microelectromechanical XNOR and XOR logic devices,” IEICE Electronics Express, vol. 10, no. 8, 2013, pp. 1-12. (JAXA宇宙科学研究所との共同研究)

4.集積化MEMS共同試作体制(ウエハ相乗りシャトルサービス)

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LSIウエハを丸ごと作ろうとすると膨大な費用が発生します。また、どこの大学にもMEMSプロセス施設があるとは限りません。 そこで本研究では国内のLSI製造企業が提供するウエハ共有方式のシャトルサービスを利用して回路を設計し、その上にMEMS構造を集積化する手法を研究しました。 また、本研究経費によりMEMSポストプロセスの装置を導入し、産学の共同研究者グループが共同で利用できる体制を整備しました。

利用ファブ:NTT−AT(0.18µm, 0.35µm、0.6µm)、東大VDEC仲介ローム社(0.18µm)、東大VDEC仲介フェニテック社(0.6µm)など

本研究の出口イメージ(応用)

A.コグニティブ無線通信(RF−MEMS周波数可変発振回路)

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コグニティブ無線通信とは、通信帯域の使用状況等をつねにモニタして、最適な通信条件になるように機器の周波数やアンテナ接続方向などをチューニングする通信方式のことです。 本研究ではRF−MEMS(Radio Frequency - MEMS)技術により静電駆動型の可変デジタルキャパシタを製作し、それを800MHz帯の周波数可変発振回路に応用しました。 本研究は、日本無線株式会社との共同研究として実施しました。

駆動電圧35V、容量値0.55〜0.73pF、1〜4ビット構成、VCOのQ値60、位相ノイズ -101dBc/Hz

参考文献: K. Urayama, K. Akahori, N. Adachi, H. Fujita, and H. Toshiyoshi, "A Low Phase-Noise VCO for Multi-Band Transceiver using Fully Packaged MEMS Electrostatic Varactors," in Proc. 26th IEEE Int. Conf. on Micro Electro Mechanical Systems, Jan. 20-24, 2013, Taipei, Taiwan, pp. 737-740.

B.モノ・ひとモニタリング(高感度MEMS加速度センサ)

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加速度センサの応用先は、スマートフォンを超えてさらに広がります。近い将来には、すべての人工物に加速度センサをつけて、モノ・ひとの動きを検出することで人間の生活をアシストする時代が来るでしょう。 そこで本研究では、人間の動きに合わせて1G未満から数Gの広範囲の加速度を検出可能なセンサを集積化MEMSで実現しました。

本研究は、NTT−AT株式会社、東京工業大学・益研究室との共同研究として実施しました。

0.35umCMOS、Vdd=3.3V、検出範囲0.5G〜6G、金メッキ構造によりブラウンノイズ低減11.7uG/√Hz

参考文献: T. Konishi, D. Yamane, T. Matsuhsima, K. Machida, K. Masu, and H. Toshiyoshi, "An arrayed accelerometer device of a wide range of detection for integrated CMOS-MEMS technology," Jpn. J. Appl. Phys., vol. 53, 027202, 2014, pp. 027202.1-027202.9.

C.どこでも画像ディスプレィ(レーザー走査MEMS光スキャナ)

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RGBのレーザー光をMEMS光スキャナで走査すると、どこにでも焦点のあう超小型の投写型画像ディスプレィを構成できます。しかも、描画用のレーザー光源をそのまま用いて、レーザー距離計測も可能です。 この特徴を生かして、スクリーン位置やユーザーの身振り手振りを検出して画像を制御するタイプのインタラクティブ画像ディスプレィを作りました。

本研究は、スタンレー電気株式会社との共同研究として実施しました。

スキャナ駆動電圧40V、画像VGAクラス、測長距離20cm〜60cm、距離分解能2cm

参考文献: Sungho Jeon, Hiroyuki Fujita, and Hiroshi Toshiyoshi, "A MEMS Interactive Laser Projection Display with a Built-in Laser Range Finder," in Proc. IEEE Int. Conf. on Optical MEMS and Nanophotonics (OMN 2013), Kanazawa, Japan, Aug. 18-22, 2013, pp. 21-22.

D.医療用の光断層観察(MEMS波長可変光源)

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赤外光の波長可変光源は光ファイバ通信用途だけでなく、医療用の光断層観察(OCT=Optical Coherence Tomography)にも広がりつつあります。 本研究では高速で動作するMEMS光スキャナを開発して、動画像も撮影可能なOCTシステムを構成しました。

本研究は、サンテック株式会社との共同研究として実施しました。

スキャナ駆動電圧70V、スキャナ共振周波数70kHz、波長可変速度140kHz、中心波長1.3um、波長帯域100nm、出力20mW、観察深さ2mm、画像分解能5〜10um、フレームレート50fps

参考文献: 諫本圭史、戸塚弘毅、酒井 徹、鈴木卓也、両澤 淳、鄭 昌鎬、藤田博之、年吉 洋、「高速MEMSスキャナを用いた第三世代SS−OCT用波長走査型光源」 電気学会論文誌E、vol. 132, no. 9, 2012, pp. 254-260.

本研究の2030年頃の応用展開

トリリオン(1兆個/年)センサ時代の未利用エネルギー回収技術として

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近い将来に、地球上で年間1兆個ものセンサを消費する「トリリオン・センサ」時代が到来すると言われています。これは東京都の面積と人口で言うと、距離1メートルに1個の割合でセンサが存在することを意味しています。 そのような時代に必要な技術として、本研究で実施したようなMEMSセンサ技術・無線通信技術のほかに、電力線や1次電池に頼らずにエネルギを供給する技術が挙げられます。

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半導体集積回路の微細化にともなって、LSIの消費電力は年々低くなっています。一方MEMS分野では、風や振動などの環境から発電するエナジー・ハーベスト技術の研究が進められています。 現在研究代表者らが取り組み中の永久電荷(エレクトレット)形成技術や静電容量増大技術により、2030年頃には至近距離(10メートル)無線通信型センサーノードのエネルギーは、MEMS型の振動発電機で供給できるようになるでしょう。

謝辞

本研究は、総合科学技術会議により制度設計された最先端・次世代研究開発支援プログラムにより、日本学術振興会を通して助成されたものです。

成果資料集より

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集積化MEMS技術による機能融合・低消費電力エレクトロニクス Integrated MEMS Technology for Multi-functional Low Power Electronics


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Last-modified: Fri, 22 May 2015 22:07:56 JST (823d)